アパート経営を考えているうえで、一度は耳にしたことがあるワード「儲からないからやめた方がいい」。
しかし、その割にはなぜ身のまわりにアパートはたくさん建てられているのでしょうか?本当にアパート経営は儲からないのでしょうか。
アパート経営といっても、経営する側にも明確な目的がある場合があります。たとえば、相続対策の一環として。先祖からの土地を残しておきたいから。立地条件がいいので利益を生ませたいから。などなど。
さまざまな事情からアパート経営を考えるかもしれませんが、今回は空室リスクを抑えるという観点も含め、アパート経営についてお話していきます。
アパート経営のいろいろ
今から始めるアパート経営
土地活用といえばアパート経営、右を見ても左を見てもアパート経営、そんなアパート経営がポピュラーな時代に、今から始めても手遅れではないのかという心配が出てきますよね。
大きな金額が動くものでもありますし、悪徳な業者もないわけではないでしょう。甘い言葉に誘われたオーナーさんも後を絶たないという現実もあります。
ではどんなアパート経営がいいのでしょうか
健全な環境下でのアパート経営
全国にアパートの数は一体いくつあるのでしょうか。アパートは軒数ではなく、部屋数で表記します。
「平成25年版の民間賃貸住宅(共同住宅)戸数及び空き戸数並びに空き家率の統計調査」によりますと、アパートの全国の総戸数は15,864,100戸、入居数12,264,400戸、空き戸数3,599700戸、空き戸率22.7パーセント。
空き戸が20パーセントを越えています。これを見てどう思いますか?
住宅のストックが十分に足りているのにどんどんアパートが建っている…といった報道や記事はよく見受けられますが、実際にはどうでしょうか。
実は、かなりの数の建物が解体されていますが、そのことについてはあまり触れられていないのです。
総務省統計局が行った平成25年(2013)住宅土地統計調査によると、平成21年から平成25年までの5年間で着工された貸家1,580,100戸に対して、解体除去数は1,354900戸であり純増数は225,200戸、純増率1.17パーセントにしかならないことがわかります。
新築工事は木造一軒家や、木造アパートでは概ね3ヵ月~4ヵ月かかるのに対して、解体工事は1週間程度で完了してしまいます。そのため、新築のイメージは強いのに解体はあまり印象に残らないのです。
しかも、当たり前ですが建物を解体すると更地になって残らないということもあります。
そのことからもわかるように、決して建てられすぎているわけではないのですが、数はというと足りている、というのが現状なのです。
アパート経営の収入源
アパート経営は不動産投資の一種で、主な収入源は家賃収入となります。それに対して修繕費や管理費、共用部の光熱費や火災保険料、ローンや固定資産税などを支払った残りが利益となります。そして、その不動産収入には所得税と住民税が課せられます。
家賃収入以外にも礼金や更新料、共益費なども収入となり、物件を売却するとその売却益も収入となります。
貸すなら一軒家?それともアパート?
一軒家を賃貸に出すより、複数戸ある共同住宅の方が家賃収入としては安定する、表面的にはそう思えてしまいますが、実際にはどうでしょうか?
もちろん、一軒家の100か0よりも仮に10戸ある共同住宅の方が安定はするように思えるかもしれませんが、周辺の物件情報や、立地によってはその限りではなさそうです。
だからこそ、周辺の賃貸物件はしっかりとリサーチをしておかなければなりません。
古くなれば入居率は下がってしまう?
賃貸物件というものは古いより、新しいものの方が価値は高くなります。
しかし、新しいからといって入居者が付くとは限りません。たとえば駅から遠い新築マンションと、駅から近い古めのアパートでしたらどうでしょう?
どちらにしようと迷う方もいるはずです。つまり、一概に新しいからいいとは言い切れないのです。隣同士建ち並んでいるマンションでも、実際に新しいマンションの入居率が悪いということはよくあるのです。
古いアパートより新しいマンションの方の家賃が高いときに、隣同士建ち並んでいる物件で駅までの距離や、その他の立地条件がほぼ同じ場合、新築物件の家賃はエリアによっては高すぎる価格帯となり、浮いてしまうため、古い方から埋まっていくといったことが起こりうるからです。
空室リスクを抑えるためにできること
時代背景や間取りを考える
同じエリアで同じような間取りが乱立する中で、わざわざ同じような間取りを作らないことが大事です。
一昔前の団地などはリビングがなくダイニングのみで、洋室ではなく和室が多かったでしょう。
これは、生活様式が今のようなスタイルではなかったことに理由があります。昔の一軒家は家族3世代で生活をし、共同生活をしていました。ところが高度成長期以降は、団地という形でありながらも自分だけの空間(=部屋)を手にすることができるようになりました。
そのため、リビングでくつろぐというより、割り振られた自分の部屋にこもって、各々が自分の時間を有効に使うようになったのです。
これが昨今の少子化と、核家族化で生活スタイルが徐々に変化していき、今のようなリビングありきの間取りへと変化をしていったという経緯があります。
そのために、空き室のリスクを減らすには、今の時代に沿った間取りにする必要性が出てきたのです。たとえば、3DKの間取りであるのならば和室は洋室へ、部屋数は3つから2つへ、そしてダイニングはリビングダイニングへと。間取りによっては広い1LDKでもいいかもしれません。
水回りの変更
お風呂やキッチン、洗面台やトイレなども、各年代で確実に様変わりしています。
給湯器などは、ものにもよりますが、10年20年もつこともあるでしょう。しかし仮に20年前のお風呂やキッチンと最新のものとでは、明らかに最新のものの方が格段に機能も見た目も素晴らしいものです。
そのようにして細かいリフォームを重ねながら物件の価値を下げないように維持し、空室のリスク回避をしていきます。
ペット飼育可物件は空室リスク回避になる?
建物が経年劣化により古くなってきた、空き室が目立ち始めたなどということが出てきた場合、それを機に「ペット飼育可物件」にするオーナーさんや、それをすすめてくる不動産業者などが現れてきます。
しかし、ペット飼育可物件にすることで、入居率が以前より下がってしまい、余計な悩み事が出てきてしまったという事例もあります。
そもそも元々の入居者からすると、ある日突然自分の住んでいるアパートがペット飼育可物件になるとどうでしょうか。
別のアパートに居住中の、ペットを飼っている方にとっても、ある日突然「ペット飼育可物件になった」と不動産屋から言われても困惑するだけではないでしょうか。
ペット飼育可物件になったからといって、今まで入居していた住民と新しい住民が瞬時にそっくり入れ替わることなどはありません。元の住人に動物アレルギーを持った人がいたらどうなるのだ、などと余計な心配があって、何も気にせずにすぐ引越しして移る…ということはできないでしょう。
ペット飼育可物件にしたからといって、空室リスクを減らせることに直結はしないのです。
まとめ
空室のリスクはアパートの数と人口の増減以外にも、たくさんあります。
目に見えることからそうでないもの、場合によっては未来を予測し、今は直接影響のないものまで見据えていかなければなりません。そのような観点からもアパート経営というものは決して簡単なものではなく、それでも困難を乗り越えてアパート経営を選んだ方がいるからこそ、今建っているアパートが存在しているともいえます。