アパートやマンション、あるいは空き家を賃貸に出しているオーナーさんの収入と支出には、どのようなものがあるのでしょうか。
空室があまりにも多く出てしまうと、アパート経営を断念し、解体工事…という方が、最終的な赤字が出なくていいのかもしれませんが、できれば順調に不動産所得を得ていきたいですよね。
憧れの不労所得の代表として挙げられる、土地やアパートによる不動産所得。国税庁の「平成30年申告所得税標本調査結果/第2表 所得種類別表」によると、平成30年のアパート経営の平均収入は518万円という数字だったようです。なかなかいい数字ですよね。
ここでは不動産投資による収入と支出にはどんなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。
不動産投資による収入
ここでいう平均収入の「収入」とは、手取り収入ではありません。オーナーさんの手取り収入はざっくりいうと「不動産所得」から「経費」と「税金」を引いた額となります。
例として、1棟10戸、家賃5万円・共益費0.3万円・駐車場代0.3万円のアパートを所有していたとします。
※共益費はオーナーさんの収入ではありませんが、簡単に計算するためにここでは一旦収入として計上します。
家賃
部屋が満室であれば5万円かける10戸で、月の収入は50万円入ることになります。
年間では12ヵ月かける50万円で600万円
当然、空室が1戸あれば5万円かける9戸となります。
礼金
礼金とは、借主(アパートに入居希望者)がオーナーさんに支払う一時金。
こちらは一回だけ支払うお金で、部屋を貸してくれるお礼の意味で渡されるもので、一般的には返還がありません。
そのため、アパートの出入りが多ければ多いほど入ってくるお金です。例でいえば家賃の2ヵ月分、10万円の収入になります。
駐車場代
こちらも家賃と同様に借主が居れば毎月入ってくるお金です。
※駐車場経営に関しては課税対象であるものとそうでないものがありますが、少し難しくなるのでここでは課税対象でないものとしてお話をします。
更新料
通常では、マンションやアパートを借りる際に契約期間を設けます (通常は2年にすることが多くなっています)。しかし期間終了後も住み続けたいという入居者の意思があれば、新たに契約の更新をします。更新料は、その時に発生する更新の手続きの手間賃といったニュアンスがあり、オーナーさんの収入となります。
最近ではこの更新料をめぐり裁判にまで発展しているケースもあり、徐々になくなりつつあります。中には関西の一部地域のように更新料という概念すらないところもあります。
不動産投資による支出
アパート経営にはさまざまな経費がかかります、必要な経費の主なものを挙げていきます。
共用部の光熱費
目安として月に0.5万円程度。
玄関ゲートや入口の電気、防犯灯や廊下などの共用灯。共用栓からの水道代など。
共用部などの清掃費
目安として月に0.5万円程度。
共用部の清掃をすることで入居者の満足度を高めるだけではなく、空室率を下げる効果が得られます。定期的に清掃を行うことで、入居者だけではなく、内覧に来た入居希望者にも良い印象を抱かせ、周辺地域の景観の向上させる働きもあります。定期的な清掃は不可欠なものです。
賃貸管理会社への管理費
概ね、家賃の4パーセントから7パーセント。目安として月に2.0~3.5万円程度。
※管理会社に委託する場合、入居者のあっせんから退去手続きまで、さらには共用部の清掃や光熱費の管理も一緒にしてくれる会社もあります。その場合の費用は管理会社との相談になるケースが多くなっています。
修繕費
約5年ごとに100万円から300万円の修繕費がかかる見込みで積立金を算出。目安として月に3.5万円程度。
火災保険料
目安として月に0.1万円程度。プランにもよりますが、水災補償なしのプランの場合として計算。
原状回復費用
こちらは退去者が出た場合に発生、ハウスクリーニングや壁紙の張替え、床や建具などの補修費用です。目安として1回の費用5万円程度。
不動産会社への仲介手数料・広告費
新たな入居者を募集するために不動産会社を経由した場合、その不動産会社に契約ごとに仲介手数料を、家賃の1か月分支払います。
その他に広告料として、別途支払うこともあります。
※広告料の設定はオーナーさんで決められますが、相場より低い、あるいはない場合は不動産会社の担当営業マンが本気で取り扱わなかったりもします。
目安として1回の契約で10万円程度(仲介手数料1ヵ月分・広告費1ヵ月分)
収入から支出を引くと
「共用部の光熱費」から「火災保険料」までの年間に掛かる費用は97.2万円となります。
※「賃貸管理会社への管理費」に関しては3.5万円で計算しています。
「原状回復費用」と「不動産会社への仲介手数料・広告費」は変動型になりますので、1年に入居2室、退去2室で計算した場合。
原状回復費用2室分で10万円、入居が2室で20万円、これらを合わせると127.2万円になります。
固定資産税
固定資産税は土地と建物にそれぞれ課税されます。
土地の固定資産税
・土地の評価額かける1.4パーセント(土地が200平方メートルまでは6分の1になる)
・200平方メートルを超える部分の土地に対しては3分の1になる
・建物の評価額かける1.4パーセント
・固定資産税は年4回にわけて支払う
建物の固定資産税
※仮に土地が評価額1800万円で800平方メートルとします。建物の評価額は2,000万円とします。
土地の固定資産税は1800万円かける1.4パーセントかける1/6で4.2万円(200平方メートル)で1.05万円。
土地の固定資産税は1800万円かける1.4パーセントかける1/3で4.2万円(200平方メートルを超える部分)で6.3万円。
建物の固定資産税は2000万円かける1.4パーセントで28万円。
合わせて35.35万円となります。
所得税
所得税の計算方法は累進課税となっていますので所得金額によって異なります。家賃収入の他、給与所得なども含まれた総所得をもとに計算されます。
アパート経営での収支
アパート経営の所得はオーナーの個人の収入と合算したものから計算されるのでアパート経営単体のものではありません、したがってここでは仮のオーナーAを想定して例を出してみます。
前項「不動産投資による収入」で触れたアパートをモデルにした場合。
満室で年2回の出入りがあった場合(「原状回復費用」と「不動産会社への仲介手数料・広告費」)、不動産所得が年間872万円の収入に対して127.2万の支出、固定資産税が35.35万円となるので、ここでの手残りが709.45万円。
オーナーA個人の収入が500万円とした場合、
500万円たす709.45万円で1209.45万円。
所得税の累進課税が900万円から1800万円では33パーセント、控除額は153.6万円となるため、所得税は348.4万円となります。
最終的に残る金額はアパート単体ではなくオーナーさんの収入としては861.05万円となります。アパートが相続されたものや、現金で購入したものであれば上記の計算でも目安の金額にはなりますが、ローンで購入した場合などは、そこからさらにローン分の金額が差し引かれることになるので、当然ながら手取り金額としてはその分下がります。
まとめ
アパートの収支の概算内訳
収入 872万円/年
内訳…家賃50万円、共益費3万円、駐車場3万円、礼金20万円(入居2回分)
支出(経費) 127.2万円/年
内訳…諸経費 97.2万円 原状回復費用10万円(退去2回分)・不動産業者に支払う金額 20万円(入居2回分)
支出(税金) 383.75万円/年
内訳…固定資産税35.35万円/年、所得税348.4万円/年
オーナーAの手取り収入は361.05万円
内訳…872万円ひく127.2万円ひく383.75万円で361.05万円
アパート経営での例として目安の金額を出してみましたが、月収として約30万円というのは副収入として考えるのであれば十分な金額でしょう。しかしこれに数千万円単位、あるいは1億円のローンが何十年もかかるとしたらどうでしょうか?
土地の購入からの計画だとさらにローンや出費は膨らみます。金利次第ではすぐにマイナスの資産になってしまう可能性もあるでしょう。
多額の借金を抱えて、空室率や家賃相場の下落など、さまざまなリスクを抱える恐れがあることを頭に入れておかなければならないということですね。